芸術の山

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【新しい目的地 destination】

 すでに1815年、フランス芸術アカデミーの重鎮、カトルメール・ド=カンシーはいう。さきごろ登場した美術館は、邸宅から礼拝堂までありとあらゆるところから、美術作品をかき集めてくる。だがそのことでかえって作品は、その本来の行き場destinationを失うことになるのだ、と。美術作品が「動産」であることが、徒になったわけだ。
 そして二一世紀の初頭、美術館について、ある雑誌記者はいう。それはもう服飾店と並ぶ現代建築のショウ・ケースで、ありきたりのツアーに倦んだツーリストたちのための、新しい目的地destinationなんだよ、と。
 スペイン北部の斜陽の町ビルバオから、北陸の古都金沢まで。各地に続々と出現しつつある美術館が、その建築としての自己像を喧伝し、また折に触れその建築に特化されたインスタレーション作品の所蔵を強調するのは、自らが〈サイト・スペシフィック〉でありたいという願望のあらわれだろう。
 作品ではなく、美術館それ自体が目的地destinationとなること。こうしてド=カンシー以来、コンスタブル、ヴァレリー、そしてアドルノと、すこしずつかたちを変えながら、けれど約二世紀間にわたって連綿と抱かれてきた美術館に対する不満──その無味乾燥な場所では作品は窒息してしまうという不満──はいま、思わぬかたちで解消されることになる。そしてかつておなじ不満から打倒美術館を叫び、そこを飛び出た〈サイト・スぺシフィック〉な作品という放蕩息子も、いまや妥協を知る大人となり、喜んで帰還するだろう。新しいdestinationとしての美術館。斜陽の町や古都がこの「不動産」に期待しているのは、作品ではなくその消費者を集めることである。(林卓行)

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